現代に甦るホメーロスの長編叙事詩
ホメーロス イーリアス〈上・下〉
出版社:せせらぎ出版
訳著:小川 政恭(おがわ まさただ)
ジャンル
小説・文芸/古典/ギリシャ文学
キーワード
ギリシア神話/吟遊詩人/神話と叙事詩/トロイア戦争/トロイア軍/ギリシア軍/トロイエー人/アカイア人/トロイア戦争における英雄/詩神ムーサ/アキレウスの怒り/アガメムノーンとアキレウスの争い/オリュンポスの神々/海の神ポセイドーン/海の女神テティス/三女神ヘーレー・アテーネー・アプロディーテーの争い/百頭牛の贄
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内容紹介
ホメーロスの『イーリアス』は、トロイの木馬でよく知られているトロイア戦争における人間の英雄の物語であり、世界最古の、また、世界最高の西洋古典文学です。このたび、神戸大学名誉教授・小川政恭氏がライフワークとして翻訳していた原稿を電子書籍・PODで刊行、ホメーロスの長編叙事詩が現代に甦りました。
ホメーロスの『イーリアス』は、トロイの木馬でよく知られているトロイア戦争における人間の英雄の物語であり、世界最古の、また、世界最高の西洋古典文学である。イーリオス(トロイア)を舞台にして、ギリシア軍とトロイア軍の英雄たちの実にすさまじい戦い、そして、英雄どうしの熱い友情の交換が繰り広げられる。そして、また神話上の神々が登場して、物語の展開を左右する。
訳者の小川政恭は、『ギリシア文化の流れ』(本書下巻に掲載)において、以下のように述べている。
「神話や英雄の物語は、王や貴族が支配した英雄時代にできた。それらを王の広間で吟誦詩人が竪琴の伴奏で物語るのを、人々は夢中になって聞いて楽しんだ。神々の祭のとき神々の事蹟をほめて歌う詩歌もあり、最初神々をほめた後で吟誦する英雄の物語もあった。神々の讃歌を集めたものは『ホメロスの讃歌』として残っているし、人間の英雄の物語はホメロスの『イリアス』『オデッセイ』である。」
『ホメロスの讃歌』には、小川政恭訳『ホメロスの讃歌集』生活社(1948年)がある。
こうして伝承されたホメーロスによる詩歌は、『イーリアス』として、紀元前6世紀のアテナイにおいて文字化され、紀元前2世紀にアレクサンドリアにおいて、ほぼ今日のかたちにまとめられたとされている。その昔、『イーリアス』は神話であるとされていた。だが、『イーリアス』の物語を手掛かりとして、ドイツの実業家で、考古学者のハインリッヒ・シュリーマンは、1871年のトロイ遺跡、1876年のミケネ遺跡、および1884年のティリンス遺跡の発掘によって、『イーリアス』は神話と叙事詩の融合であることを実証したのである。
〈目 次〉
【上巻】
- 復刻版出版にあたって
- 第一歌 疫病 怒り
- 第二歌 逆夢(さかゆめ)試し 軍船の目録
- 第三歌 誓い 城壁からの観戦 パリスとメネラーオスの一騎討ち
- 第四歌 誓約の蹂躙 アガメムノーンの巡回
- 第五歌 ディオメーデースの武勲
- 第六歌 ヘクトールとアンドロマケー別れを惜しむ
- 第七歌 ヘクトールとアイアースの一騎討ち 死体の取り片付け
- 第八歌 戦闘の中断
- 第九歌 アキレウスの遣使 嘆願
- 第十歌 ドローンの段
- 第十一歌 アガメムノーンの武勲
- 第十二歌 堡塁の戦い
- 第十三歌 船体のそばでの戦い
- 現代に甦るホメーロスの長編叙事詩『イーリアス』―小川政恭訳復刻版の意義 神奈川大学名誉教授 伊坂 青司
【下巻】
- 第十四歌 ゼウスを瞞す段
- 第十五歌 船隊からの反攻
- 第十六歌 パトロクロスの巻
- 第十七歌 メネラーオスの武勲―パトロクロスの屍を争う戦闘―
- 第十八歌 武具をつくる段
- 第十九歌 怒りを解く
- 第二十歌 神々の戦い
- 第二十一歌 河畔の戦い
- 第二十二歌 ヘクトール討ち死に
- 第二十三歌 パトロクロスの葬儀と弔いの競技
- 第二十四歌 ヘクトール請戻し
- ギリシア文化の流れ 小川政恭
- ホメーロスの視覺性 小川政恭
著者プロフィール
小川 政恭 (おがわ まさただ)
略 歴
- ●1908年(明治41年)4月7日生
- ●熊本の第五高等学校卒
- ●京都大学文学部卒
- ●武蔵高等学校勤務
- ●宮城女学校勤務(昭和15年4月~昭和18年8月)
- ●東北大学図書館司書(昭和18年8月~昭和25年3月)
- ●神戸大学教養部教授
- ●大阪経済法科大学勤務
- ●神戸大学名誉教授
- ●1995年(平成7年)9月14日没
主要著書(翻訳)
- ●小川政恭訳『ホメロスの讃歌集』生活社(1948年)
- ●ホメーロス「イーリアス」試訳
- ▼「近代」(神戸大学近代会 1956年4月14号から14回)に連載
- ▼「大阪経済法科大学論集5号・1978年5月~17号・1982年7月」(大阪経済法科大学経法学会)に試訳を連載 「近代」掲載の試訳の文体を変更。
- ●ヒッポクラテス著、小川政恭訳『古い医術について 他八篇』(岩波文庫、2015年7月8日 第36刷発行)
論文
- ●中島健蔵、山室静編『新訂版 人間の心の歴史1』(英宝社、昭和30年3月25日初版、昭和45年10月5日新訂版第1刷)第二章「ギリシャ文化の流れ」(pp.42–98)
- ●小川政恭『ホメーロスの視覚性』(神戸大学近代会、近代1号1952年12月)
- ●小川政恭『ホメーロスの視覚性』(神戸大学近代会、近代4号1953年9月)
- ●小川政恭『ホメーロスの視覚性』(西洋古典学研究、1954年2巻 pp.25–35)
- ● 小川政恭『イーリアス』IX 312–313の解釈を中心として(西洋古典学研究、1968年16巻 pp.13–23)
書 評
- ● GRENSEMANN, Hermann, Knidische Medizin. Teil I : Die Testimonien zuraltesten knidischen Lehre und Analysen knidischer Schriften im Corpus Hippocraticum., ARS MEDICA, Abt. II Griech.-latein. Medizin Bd. 4, 1. Pp.xxiii+275, Walter de Gruyter, Berlin, 1975., DM. 128.0(西洋古典学研究、1978年26 巻 pp. 143–145)